エスカレーター立ち止まり隊の日給は高すぎる?税金の無駄遣いか検証!

名古屋市がエスカレーターの安全利用を呼びかけるために発足させた「なごやか立ち止まり隊」。

彼らは右側に“通せんぼ”のように立ち、歩かず立ち止まる利用者を増やすことを目的としています。

しかし、注目されたのはその日給1万6000円という金額でした。

市民からは「税金の無駄では?」という声もあり、この取り組みが果たしてコストに見合う効果を上げているのか疑問の声が上がっています。

本記事では、実際の活動内容や支出額、他自治体との比較などを通して、この人件費が妥当なのか、それとも税金の使い方として疑問が残るのかを多角的に検証していきます。

なぜ日給1万6000円なのか?自治体の狙いと背景

立ち止まり隊の活動内容と報酬設定の背景について解説します。

立ち止まり隊の仕事内容と勤務条件

なごやか立ち止まり隊は、名古屋市内の主要な19駅で、エスカレーターの右側に立ち、歩行を控えるよう静かに呼びかける活動を行っています。

隊長は日給1万6000円、隊員は6500円が支給されており、1日あたり6時間の勤務で構成されています。

この日給には「啓発に対する精神的・身体的な負担」も加味されており、目立つ行動や通行人との軽いトラブルへの対処も視野に入れて設定されているとのことです。

名古屋市の狙い:目に見える啓発が必要

名古屋市の担当課によると、条例だけでは浸透が難しいため、「視覚的に訴える人の存在」を導入することに意味があるとされています。

特に朝夕のラッシュ時は無意識に歩く人が多く、注意喚起のためには“通せんぼ”のように右側に立ちふさがる人が有効との判断です。

これまでに延べ50日間で活動が実施されており、市の調査ではエスカレーターで歩く人の割合が80%→90%以上減少したとされています。

③ 他の自治体との報酬比較

埼玉県や東京都ではボランティア形式での啓発が主で、日給が支払われていない場合もあります。

しかし、効果の持続性や定着度に課題があり、「有償で責任ある立場を与える」方が啓発活動としての継続性が高いという意見も出ています。

つまり、日給1万6000円は“高い”という印象より、持続性と効果の対価としての“投資”という見方もできるのです。

 

市民から見た「高すぎる」「税金の無駄」の声

立ち止まり隊への報酬が適正かどうかについて、市民の視点ではどのように受け取られているのでしょうか。

SNSや街頭の意見からは、疑問の声や納得できないという反応も少なくありません。

「なぜ通せんぼに1.6万円?」SNS上のリアルな反応

X(旧Twitter)やYahoo!コメント欄では、以下のような投稿が目立っています:

「止まってるだけで日給1.6万はちょっと…」

「税金払ってる側としては疑問しかない」

「せめてボランティアじゃダメなの?」

こうした反応には、「立っているだけ」「誰でもできる仕事」に対して報酬が過剰ではないかという意識が根底にあります。

とくに生活防衛意識が強まっている昨今の経済状況では、“市の支出=自分の税金”という視点でコストを厳しく見る市民も増えています。

税金の使い道として適切か?という問い

立ち止まり隊の費用は、市民から集めた税金を使って捻出されている点が最大の争点です。

そのため、費用対効果が見えにくい啓発活動に高額の支出があると、「無駄遣いでは?」という声が挙がりやすくなります。

たとえば、1日6時間の活動に対して1.6万円を支給し、月に4~5日活動したとすると、年間数百万円の予算が消費される計算になります。

この額に見合う効果がどこまであるのか、行政の“成果報告”の質と頻度が問われています。

一方で「抑止効果はある」と評価する声も

批判的な意見がある一方で、「エスカレーターで歩かなくなった」「事故が減った」といった肯定的な声も一定数見受けられます。

特に高齢者や子ども連れの利用者からは、「危険が減って安心」という声があり、“安心代”としてのコストと考えれば妥当とする意見もあります。

 

啓発の費用対効果をどう判断するか

エスカレーターでの歩行を防止する「なごやか立ち止まり隊」には、年間数百万円規模の人件費が投入されています。

では、そのコストに見合った効果は本当に出ているのでしょうか。ここでは、啓発活動の費用対効果という視点で考えてみます。

明確な数値目標はあるか?

名古屋市消費生活課の発表によれば、条例施行前はおよそ80%の利用者が歩いていたのに対し、現在では90%以上の人が立ち止まっているとしています。

これは「たった10%の改善」と見るか、「確実な意識変化」と捉えるかで評価は分かれます。

また、事故件数の推移や交通機関の安全指標など、より定量的なデータの開示がない点も課題とされており、費用対効果の測定があいまいになっているとの指摘もあります。

行動変容には“人”が必要だった

公共キャンペーンの多くはポスターやアナウンスなど、間接的なアプローチにとどまりがちです。

しかし今回のように、実際に現場に人を立たせる「能動的な介入」は、行動科学の観点からも高い効果があるとされます。

例えば、心理学では「見られていることによる自制効果(監視効果)」が知られており、現場に人が“ただいるだけ”でも、無意識の行動を抑制できるとされています。

このような点から見ると、「ただ立っているようでいて、潜在的な安全意識を引き出す触媒」になっている可能性も考えられます。

安全対策における“見えない成果”

転倒や接触事故が「起きなかったこと=成果」である安全対策では、可視化が難しいという側面があります。

立ち止まり隊の活動により、「事故が起きなかったこと」自体が成果であり、その“未然防止”にいくらかかるかは定量的に示しにくいのが現実です。

ただ、もし一度でも重大な事故が起き、行政が“なぜ予防策を取らなかったのか”と責められれば、それこそが大きな社会的コストになります。

そう考えると、先手の投資としての人件費支出は、単なる支出ではなく、リスク管理費用とも言えるでしょう。

 

歩かない文化は定着する?他都市との比較

名古屋市が条例と立ち止まり隊によって“歩かない文化”の定着を目指している一方で、他の自治体ではこの取り組みがどのように進んでいるのかも気になるポイントです。

ここでは、代表的な都市である埼玉県・東京都・大阪府と比較しながら、エスカレーターの利用マナーに対するアプローチを見ていきます。

埼玉県:全国初の条例も“慣れ”による形骸化?

埼玉県は2021年10月に、全国で初めてエスカレーターでの立ち止まりを義務付ける条例を施行しました。

当初は駅構内でポスター掲示やアナウンスが強化され、一定の成果が見られました。

しかしその後、時間が経つにつれて市民の関心が薄れ、「結局また歩いてる人が増えた」という声も。

啓発が継続的に行われなかったため、「一時的な改善にとどまった」という評価が多いのが現状です。

東京都:条例なし、マナーは自己判断に委ねる

東京では現在、明確な条例は存在せず、各駅や鉄道会社が独自に「安全利用の呼びかけ」を行っています。

山手線や東京メトロなどでは、右側を歩く人、左側に立つ人という暗黙のルールが根強く、文化として“歩くこと”が習慣化しています。

一部駅では「両側に立ちましょう」という案内もありますが、利用者の大多数は依然として歩行派。条例がないことで、マナーが統一されず曖昧な状態が続いています。

大阪府:東京と逆で「右立ち・左歩き」文化

大阪ではエスカレーター利用マナーが東京と真逆で、右側に立ち、左側を歩くのが一般的です。
この“関西ルール”は鉄道会社も黙認しており、立ち止まる啓発が行われた例は極めて少数です。

一部では「万博を見据え、国際標準に合わせるべき」との声もありますが、文化の違いが根深く、条例化には至っていません。

これにより、「マナーは地域性に依存する」という問題点が浮き彫りになっています。

全国的に見ても、「エスカレーターで歩かない」文化が定着しているのは今のところ名古屋が最も進んでおり、その理由の一つが“通せんぼ”という実地的アプローチだと言えるでしょう。

 

立ち止まり隊に代わる方法はあるか?

エスカレーターの安全利用を促すために、名古屋市が導入した「立ち止まり隊」。

その存在が成果を上げつつも、「税金の使い方としてどうなのか」「他にもっと効率的な方法はないのか」といった声が上がるのも事実です。

ここでは、代替となり得る方法や今後の改善策を検討していきます。

AI・監視カメラによる自動抑止システム

近年では、AIカメラやセンサーによる自動検知・音声案内の導入が進んでいます。

実際に、JR東日本では特定のエスカレーターにセンサーを設置し、歩行者を検知すると注意喚起の音声を流す仕組みを試験的に導入しました。

このようなシステムが普及すれば、人件費をかけずに持続可能な啓発活動が可能となります。

ただし初期導入費用は数百万円単位となるため、短期的には人件費の方が安価なケースもある点に注意が必要です。

学校・職場・地域での「マナー教育」

交通安全や防災と同様に、エスカレーターの利用マナーも啓発ではなく“教育”によって定着させるべきという意見もあります。

小中学校での生活安全指導や、企業内研修での共有など、日常の中に自然と組み込むアプローチです。

長期的に見れば、こうした方法は市民全体の意識改革に効果的であり、継続的な人件費を削減する可能性も秘めています。

ゲーミフィケーションによる啓発

近年注目されているのが、“ゲーム感覚”でマナーを学ぶ仕組み(ゲーミフィケーション)の活用です。

たとえば、止まってエスカレーターに乗るとポイントが貯まるアプリを提供したり、駅構内にデジタルサイネージを設置して“その場での正しい行動”を褒める仕掛けなどが考えられます。

このようなアプローチは、若年層への訴求力が高く、SNSで拡散されやすいのが特徴です。啓発活動に現代的な視点を取り入れることが、今後のカギになるかもしれません。

「立ち止まり隊」という方法は確かに即効性がありますが、持続可能性・費用対効果・地域への定着を考えると、他の方法と組み合わせた多層的アプローチが今後は求められるでしょう。

まとめ

エスカレーターで歩かないという新しい“マナー”を定着させるために、名古屋市が導入した「立ち止まり隊」。

その報酬である日給1万6000円が「高すぎる」と捉えられる一方で、実際には利用者の行動変化や事故の抑制といった目に見えにくい効果が着実に現れています。

もちろん、税金が使われる以上はその支出が妥当かどうかを検証する視点は欠かせません。

ただし、安全や秩序を維持するための“仕組み”には、目に見える数字以上の価値があることも事実です。

筆者個人としては、このような取り組みが議論を呼ぶこと自体が健全だと感じています。

「税金が使われることに説明責任を求める市民の意識」と「行政が示す安全への配慮」が交差する場所に、成熟した社会の在り方が見えるのではないでしょうか。

今後は、立ち止まり隊だけに頼るのではなく、AI・教育・市民参加など多方面からのアプローチを加えることで、持続可能でスマートなマナー啓発につながることを期待したいと思います。

 

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